体や頭の位置をある一定の方向に向けたときだけめまいが起こる場合も、前庭神経が原因で、「良性発作性頭位めまい」といい、危険性はありません。
突然言葉がしゃべりにくくなる呂律(ろれつ)困難が起こった場合は要注意です。呂律困難は大脳、脳幹、小脳のどこに異常があっても起こります。ラクナ梗塞という小さな脳梗塞で、症状が呂律困難だけでありMRIなどの検査をしなければわからないこともあります。
頭や身体の位置関係をキャッチする認知機構のどこか一部に異常が生じ、うまく働かないと、回転性めまいやフラフラ感が起こる可能性があります。
めまいの原因になり得るのは<表2>に示したように、耳、眼、首に異常がある場合
例えば、右の三半規管の管の一つにゴミのようなものがたまったとします。頭をある方向に動かした時に、左の三半規管の液体はそれと反対方向に動いて「いま頭はこちらの方向に動いた」という情報を伝えます。
ところが、右の三半規管の一つはゴミがたまっているために液体は動きませんから「いや、頭は動いていない」と、間違った情報を送ります。
平衡中枢は左右の耳からの情報の違いを処理できずに混乱し、回転性めまいを起こすのです。このような左右の耳からの情報の違いは、頭が動いているときだけ生じますから、頭の動きが止まり、三半規管内の液体が静止状態になると、情報の食い違いはなくなり、めまいも治まります。つまり、この場合のめまいは頭部が動いているときだけ起こり、動きが止まると間もなく消失するはずです。
これが「耳性めまい」の一つである「良性発作性頭位性めまい」の起こる仕組みです。
めまいを起こす耳鼻科の病気はいろいろありますが、大きく分けて二種類あります。一つは、めまいと同時に耳鳴りが起きて耳が聞こえにくくなるタイプで、突発性難聴やメニエール症候群などが代表的なものです。もう一つは、めまいだけが起こり聴力には異常をきたさないタイプで、良性発作性頭位性めまい、前庭神経炎などが代表例です。
耳の異常によるめまいは、原因がどれであってもほとんど例外なく回転性めまいを生じ、突然始まります。